- 2012年9月11日 11:50 AM
- ニューヨークに、愛をetc
最初は『やすらぎの戦士』や『魂の目的』などで著名なセラピストのダン・ミルマンが書いた「ニューヨークに、愛を」というエッセイです。
友人と一緒に、ニューヨークで、タクシーに乗った時の事だ。 降りる時、友人はタクシーの運転者に声をかけた。 「どうもありがとう。君は、実に運転が、上手いね。」
運転手は、それを聞くと、一瞬びっくりしていたが、
「お客さん、口がうまいね。からかっちゃ困るぜ。」と言った。
「いやいや、そうじゃないよ。ニューヨークは、車がひしめきあっているし、無茶苦茶な運転をしている連中が多いだろう? そんな中で、君が、驚くほど冷静なんで、感心しているんだ。」
「そうかい」と、そっけなく言って、運転手は走り去った。
「今のは、何だったんだい?」と、私が聞くと、 「僕はニューヨークに愛を呼び戻したいんだよ。こんなにすさんでしまったニューヨークを蘇らせる方法は愛しかないと信じているんだ」と、友人は答えた。 「君一人の力でかい?」
「僕一人の力じゃないよ。考えてごらんよ。僕の言葉で、今の運転手は、気分を良くしたと思うんだ。あのタクシーが、これから20人の客を乗せるとする。運転手が、いい気分でいれば、客に親切をするだろう。すると、今度は、その20人の客が、まわりの連中に、また親切をする。つまり、連鎖反応を起こすわけさ。自分の会社の従業員とか、どこかの店員とか、レストランのウエイターだとか、ひょっとすると、普段は、ほとんど気にかけない家族にさえもやさしくするかもしれないさ。そうすれば、やがて1000人以上の人を巻き込む計算になる。すごいだろう!?」
「でも、さっきの運転手を勘定に入れての話だろう? 彼が、親切にして回るという保証はないよ」
「わかっているさ、人、それぞれなんだから。だけど、もし、僕が、今日、10人の人間に親切にしたとして、その中のたった3人だけでも、気分が良くなってごらん。これが、まわりまわって3000人以上に影響を及ぼすってわけさ。」
私は、それを聞いて、なるほどとは、思ったものの、 「理論的にはそうかもしれないけど、実際は、そう上手くいくとは思えないな」と答えた。
「もし、期待通りにいかなかったとしても、何の損になる? そもそも、『いい仕事をしたね』と、言うのに、全然時間はかからないよ。チップを増やすわけでも、減らすわけでもない。相手に通じなくても、それはそれでいいじゃないか。また、明日、別の相手に、試してみればいいことさ」
「お前、本気で言ってるのかい?」
「君こそ、素直じゃないよ。僕らの会社の連中だって、給料が、安いっていうだけで、ブーブー言っているわけじゃないんだ。どんなに一生懸命やっても、何も言ってもらえないのが面白くないのさ」
「でも、連中の仕事に対する態度は、いいかげんじゃないか」
「そこなんだよ。みんな心のどこかで、真面目に働こうとサボろうと、誰も気にかけやしないと思い込んでいるんだよ。どうして、誰も優しい言葉をかけてあげないんだろう?」 こう話ながら歩いているうちに、工事現場にさしかかった。 ちょうど、5人の作業員が昼御飯を食べていた。
友人は、そこで立ち止まると、建設中のビルを見上げながら、作業員たちに話しかけた。 「すごいね!素晴しい仕事ぶりだ。こんな、ものすごいビルを建てるのは、さぞかし難しいし、危険なんだろうなあ」
作業員達は、この不思議な男をいぶかし気に見上げた。
だが、友人は全く気にせず続けた。 「いつ、出来上がる予定なんだい?」
「六月さ」と、作業員の一人が、しぶしぶ答えた。
「そりゃあ、スゴイね。君たち、これだけ、いい仕事ができるんだから、さぞかし鼻が、高いことだろうね」
作業員達は、あっけにとられたままだったが、私達は、また歩き始めた。
「あの作業員達が、僕の言ったことを、かみしめてくれれば、きっといい気分になると思う。こうやって、この街全体が、また少し幸せを取り戻すんだ」
「でも、やっぱり、お前一人の力では、無理だよ」と、私は、まだ賛成できずにいた。
「肝心なのは、途中で、諦めないことなんだよ。大都市の人間に、昔のような優しい心を呼び戻すのは至難のわざかもしれない。でも、他の人たちも、この親切キャンペーンに、参加してくれるようになれば...」 そこまで言うと、彼は、途中で話を止めた。
通りがかりの女にウインクをしたのだ。
私は思わず言った。 「ふーん、どう見ても、見映えのしない女だと、思うがな」
「わかってる。でも、想像してごらんよ。もし、彼女が、学校の先生だったら、
クラスの生徒達にとって、今日は、最高の一日になるだろうね」
次は100万分の1の命という話です。
私の友人がメキシコを訪れた時の話です。夕暮れ時、人影のとだえた海岸を歩いていると、遠くの方に誰かが立っているのに気がつきました。近づいてみると、メキシコ人の男が何かを拾っては海に投げ入れているのです。さらに近づくと、それはヒトデでした。男は、引き潮で波打ち際に取り残されてしまったヒトデを、1つ1つ拾い上げては海に投げ入れていたのです。どうしてそんなことをしているのだろうと不思議に思った友人は、男に話かけました。
「やあ、こんばんは。さっきから気になっているんだけど、何をしているか聞いてもいいかね?」
「ヒトデを海に帰してやっているのさ。見ろよ、たくさんのヒトデが波で打ち上げられて、砂浜に残されてしまっているだろう。おれがこうやって海に投げてやらなかったら、このまま干からびて死んじまうよ」
「そりゃあ、もっともな話だが、この海岸だけでも、何千というヒトデが打ち上げられているじゃないか。それを全部拾って海に帰してやるなんて、どう考えても無理な話じゃないかな!それに世界中には、こんな海岸が何百もあるんだよ。君の気持ちはわかるけど、ほんの一握りを助けたって何にもならないと思うがな」
これを聞いた男は白い歯を見せてニッと笑うと、友人の言葉などおかまいなしに、またヒトデを拾い上げ、海に投げ入れました。
「いま海に帰っていったヒトデは、心から喜んでるさ」そう言うと、また1つヒトデを拾い上げ、海に向かって投げ入れたのでした。
皆さんはこの2つの話を読んでどのように感じましたか?どちらも似た話ですが、ほんの小さな努力でも地道に続けていればやがては大きな力になって行くということを啓蒙する話だと思います。
我々は自分1人の力ではどうにもならないと判断して、初めから投げ出してしまうことが良くあります。たとえば若者の中には、国政選挙があっても、自分1人が投票しようがしまいが結果に大差はないと決めつけて全く選挙に行かない人が結構います。
また登山においてゴミの持ち帰り運動をしても、自分1人くらいのゴミなら問題ないと勝手に決めて、ゴミを持ち帰らない人もいます。
町で花いっぱい運動をやっても、自分1人が参加しようがしまいが町全体の美化にはほとんど関係ないと決めて、全く協力しない人もかなりいます。
また、町で恵まれない子どもたちへの募金活動をしていても、自分1人の寄付など全く役立たないと決めて一切協力しない人々もかなりいます。
しかし世の中の人々全員がそのように考えていたら、未来はいったいどうなってしまうでしょうか?
今回紹介した2つの話はどちらもアメリカの話ですが、日本にも同じような努力をしている人が意外といるのです。たとえば大手カー用品専門店イエローハットを設立した鍵山秀三郎さん、それから納税額日本一で有名な銀座まるかんの斉藤一人さんやその弟子のみっちゃん先生です。
鍵山秀三郎さんは会社設立当初から素手でトイレの便器を磨くことを実践しています。
その理由を下記の赤字のように述べています。
自分の人生の中で、大きく掲げて取り組んできたことは掃除です。やり始めたきっかけは会社の人たちの心を癒したいということでした。しかし、なかなか効果が上がらず、最初は会社の人たちもおざなり程度の掃除しかしようとしませんでした。それでも社員に強制することはせず、毎朝6時に出社後、トイレや玄関の掃除をし、営業車をきれいにするようにしていました。願いはなかなか通じませんでしたが、5年、10年後にはよい結果が現れてきました。10年後、数人がやるようになり20年後、大半が自発的にやるようになり、30年後、外部から掃除の仕方を教わりにきたり、地域の掃除運動に広がっていきました。そして今では、ブラジルの公園をきれいにしようというところまできました。
斉藤一人さんはレストランでお水をもらった時はもちろん、高速道路のサービスエリアでトイレの掃除をしてくれる人にも「ありがとうございます」と言います。道路工事をしている人にも「ありがとうございます」と言い、常に誰かに出会うたびに「ありがとう」を言っています。
斉藤一人さんは何かをしてもらうと、すぐに笑顔で「ありがとう」と言い、笑顔の花をあちこちに咲かせているのです。
また弟子のみっちゃん先生は、人をほめる名人です。
みっちゃん先生は笑顔じゃない人にも「いい笑顔ですね」とほめるのです。
そのワケを聞くと、「誰だって素敵な笑顔を持っている。私たちに笑顔を見せないのは、その人が笑顔の出し方を間違えているか、忘れているだけ。思い出せば、誰だって素敵な笑顔を持っているのよ。」とお答えになります。そうして、いつも仏頂面であったあるウェートレスさんを「いい笑顔ですね」とほめまくって、いつのまにか素晴らしい笑顔のウェートレスさんに変えてしまったのでした。
今回のマンスリートークで紹介した行動は、特別な才能の持ち主でないと実行出来ないような難しいことではありません。やる気さえあれば、明日からでも誰でも真似を出来ることです。
我々医療関係者ならば、目の前の患者さんを十分に満足させることが出来れば、その方の満足感が家族にも波及します。すなわち、我々は1人の患者さんを通してその方の家族までもハッピーにすることが出来る訳です。
過去の具体例として、美容医療(リンク)で顔のひどいシミを目立たなくしてあげたところ、その方のうつ病までもが劇的に良くなってしまい、その結果、その方の家庭の雰囲気がすごく明るくなったという実話があります。[2012年3月のマンスリートーク後半(リンク)にこの記載があります。]
しかし、反対に目の前の患者さんに不愉快な思いをさせてしまうと、その思いは1人だけに止まらずに、その方が接触する同僚や家族にまで影響を与えてしまうという可能性もあります。
そのように考えると医療の仕事というのは、やりがいはありますが、それだけ責任も重いということになります。
今回登場した5人の話は、当院の医師、看護師、事務員も見習わねばならないことが多々あります。
谷口医院のスタッフ全員で今回の話をよく学習し、受診される皆様に少しでも気分良く帰ってもらい、その方の家族までもがハッピー感を味わえるように努力することが、我々の義務であるということを痛感致しました。
今回のマンスリートークの内容は読者の皆様よりも、まず我々が率先して真似をするべき話でした。
今後、スタッフ一同出来る限り「受診される患者様へ愛を!」の精神で皆様と触れ合う決意ですから、至らない点がありましたら、何なりとご注意下さるようにお願い致します。
文責
谷口雄一
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