人の体は、約37兆個の細胞でできていますが、日々古いものと新しいものが入れ替わっています。1年間ですべての細胞は入れ替わると言われています。細胞はたくさんの分子でできています。新しい分子を使って体の構造物に組み込まれることを同化と言います。
反対に、古くなった構造物は代謝されて排泄されるわけですが、こちらを異化と言います。
同化をするためには、材料である栄養素が必要です。この栄養素が量や質において、正しくあるべきように供給されていないことにより、細胞レベルでまず質が低下し、やがて機能が低下し、さらに劣化が進むと、臓器の障害となり疾患として診断されます。
食事の指導や栄養素の補給により、分子レベルでの改善をすることにより、機能やひいては疾患の改善をめざすアプローチがあります。それが栄養療法です。
栄養素が十分あることにより、細胞レベルでまず機能が改善し、結果的に体全体の自然治癒力が高まると考えるとわかりやすいでしょう。
分子栄養学を基本にした考え方により、必要と考えられる栄養素を使って、疾患を改善させようという学問があります。分子整合栄養医学といいます。
アメリカの科学者でノーベル賞を2回受賞されたライナス・ポーリング博士とカナダの精神科医であるエイブラム・ホッファー博士が出会ったことによりこの言葉が生まれました。
オーソモレキュラー療法(栄養療法)という治療法は50年近くまえに、ポーリング博士とホッファー博士により確立されました。オーソとは正しく整えるという意味で、モレキュラーは分子という意味です。分子は、ビタミンであったり、ミネラルであったり、アミノ酸であったり、脂肪酸であったりします。正しいあるべき分子が最適な量で供給されて、細胞内に組み込まれていたり血液中や細胞間に存在することができるように、栄養素としてそれらの物質を供給して正しい状態にするという治療法です。
栄養療法によるアプローチは、本来、体のなかにある分子を使っての治療ですから、現代医療で使う薬剤(化学物質であり、体の分子としては本来存在してない)とは違って副作用もなく、体に優しい治療といえます。
この治療法は、
オーソモレキュラー研究会で勉強させていただきました。
この勉強会には、内科 心療内科 精神科 整形外科 美容皮膚科 産婦人科など あらゆる科の医師たちが集まっています。それぞれに良い成果を実感しながら、分子整合栄養医学を学ぶ熱気あふれる会です。どの科でも応用できるという魅力ある治療方法であります。精神的な問題の解決のために使っても、ついでに皮膚も改善するということも当然よくあります。栄養素は全身に届きますので。
もともと、「薬を使うことでは本当には治癒しない」というスタンスで診療をしていましたので、この分子栄養学の学びは、「目からうろこ」であったと同時に、患者さんを診察していく上で、大きな支えとなっています。