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2013年5月のアーカイブ
アウトプット(出力すること)の重要性について!
- 2013年5月22日 7:09 PM
- アウトプット(出力すること)の重要性について!
人間は、人に話したり伝えたりすることで、物事の記憶が深くなります。
したがって、覚えておきたい話や知識は、繰り返し他人に伝えると、結果として自分の頭の中にその記憶が一段と忘れにくいものとなります。
「受け取るよりも、与えるべきである!」という教えがあります。
与えることは、1つの表現方法であり、また、生きることそのものです。
ここまでの赤文字で書いた数行の文章が、5月のマンスリートークで皆様に伝えたいことです。
ここからあとは、その具体例を4つほど紹介していきます。
Ⅰ.まずは1番目の話です。
勉強は教科書を復習するより問題を解くほうが効果的です──。そんな論文が『サイエンス』誌の2008年2月15日号で報告されました。 米パデュー大学のカーピック博士の研究です。より専門的に説明すれば「入力を繰り返すよりも、出力を繰り返すほうが、脳回路への情報の定着がよい」ということです。カーピック博士はよく練られた実験デザインを活用して、この面白い事実を発見しました。実験内容は次の通りです。
ワシントン大学の学生を多数集めて、スワヒリ語40個を暗記する試験を行う。
adahama=名誉、farasi=馬、sumu=毒…といった具合に単語のペアを5秒ずつ提示して次々に覚えさせます。
しかし、名門大学の学生とはいえ、40個を一回で覚えることはほぼ不可能です。
そこで何度も繰り返して覚えてもらうのですが、この時、学生たちを4つのグループに分けて学習してもらいました。 1つ目のグループには40個を通しで学習させ、その後に40個すべてについて確認テストする。この学習とテストの組み合わせを、完璧に覚えるまで何度も繰り返す。
2つ目のグループは、確認テストで思い出せなかった単語だけを選んで学習させる。
ただし、確認テストでは毎回40個すべてを試験する。そして、テストで満点が取れるまで学習と試験を繰り返す。 3つ目のグループはこの逆のパターンです。覚えていない単語があったら、初めから40個すべてを学習してもらう。そして、先ほど覚えていなかった単語だけを確認テストする。そして、満点が取れるまで学習と試験を繰り返す。最後のグループは、学校の授業でしばしば使われるパターンです。確認テストで思い出せなかった単語だけを学習して、再確認テストでも先ほど覚えていなかったものだけを試験する。そして、再試験すべき単語がなくなるまで学習と試験を繰り返す。
その結果ですが、試験当日は、この4つのグループにおいて習得の速さには差はありませんでした。しかし、1週間後に再テストを行うと明らかな差が出ました。グループ1と2は約80点と好成績であったのに対し、グループ3と4はともに約35点しか取れなかったのです。
さて、話が込み入っているので、丁寧にデータを再考してみます。
グループ1と2に共通するプロセスは何かといえば、確認テストで40個すべてをテストしながら覚えたという点です。一方、グループ3を見てみると、学習は毎回40個について行っているが、確認テスト、つまり思い出す練習は、苦手な単語に対してのみ行ったという点がグループ1や2とのはっきりした違いです。
上記の結果から、「私たちの脳は、情報を何度も入れ込む(学習する)よりも、その情報を何度も使ってみる(想起する)ことで、長期間安定して情報を保存することができる」ということが分かります。 言うなればこれは、参考書を繰り返し丁寧に読むより、問題集を繰り返しやるほうが、効果的な学習が期待できるというわけです。営業職の方なら、自社製品の技術資料を繰り返し読むより、顧客先で何回もプレゼンテーションをこなす方が、製品の情報がよく頭に入るということです。(営業をなさっている方の場合、会社内で上司と一緒に資料を数回読むよりも、クライアントに対して実際にプレゼンテーションしたほうが、明らかに自分の記憶が確かになったという経験があるのではないでしょうか?)
入力よりも出力を重視、そうです、脳はそのようにデザインされているのです。
私事で恐縮ですが、今から45年以上前、宇都宮市の一条中学に在籍していた頃、自分でも同じような経験をしています。当時、自分はテニス部に在籍していました。中学の1学期、2学期のテストのときは、試験直後にいつもテニスの大会が控えていて、試験前でも練習がありました。
そうなると、試験勉強に費やす時間もあまり確保出来ないため、問題集をじっくり自分で解くという時間がなく、参考書の例題と解答を同時に見るという学習でした。つまり、インプットだけで、アウトプットが不十分の勉強だったのです。そうすると、試験問題を見て、それが全部知っている問題でも、実際に解答するとなると、時間内で解けない部分が出てきたのです。
そんな苦い経験から、試験後のテニス大会がない3学期は、勉強時間を十分確保して、問題集をまずは自力で解き、そのあとに解答を見るという方法を実行しました。
そうすると、「問題を読む→即、解答を見てしまう。」という勉強法よりも1問1問に要する時間はかなり長くなり、1日で出来る問題数はかなり減ってしまったのですが、本番の試験では1学期、2学期よりも高得点になりました。学友たちからは、「お前は1月生まれだから冬に強くて、3学期になると勉強が出来るのだな!」と言われていましたが、本当の理由は冬になるとテニスの大会がなくて、アウトプット(出力)の時間を持てたというのが真相です。
Ⅱ.ここからは2番目の話です。
私の大学時代、すでに退官されていた七条小次郎先生(リンク有り)という名誉教授が数回授業に来られて、自分の教授時代の苦労話をしてくれました。
その七条先生の言葉で、今でもはっきり覚えていることがあります。それは、「自分は学生たちへの臨床講義があったから、医学知識が深くなった。臨床講義こそが、自分を育ててくれた。」という言葉です。七条先生のような有名教授の外来には、全国から大勢の患者さんが集まってきて、自分の学習時間はあまり取れなかったということです。
しかし、毎週学生への臨床講義をしていることで、自分の頭の中がきちんと整理されて、その結果、毎年毎年知識が深く正確になっていったということです。つまり、学生たちへの授業というものがあったので、自分も成長出来たのだというお話でした。
Ⅲ.3番目は最近、テレビ朝日、火曜夜の「たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学」に日本を代表する皮膚科の名医として出演されている北島康雄先生(リンク有り)の話です。
私が自治医大の皮膚科に在籍していたとき、北島先生は助教授でした。
北島先生の言葉として忘れられないものを紹介します。
「谷口先生、患者さんを受け持つ時は、苦手な病気の患者さんを受け持ちなさい。学会で症例発表するときも、苦手な病気について発表しなさい。」
皆さんは、この言葉の意味が分かりますか? 苦手なものを担当して、それについて学会などで発表していると、いつのまにかそれが苦手でなくなる。そうしているうちに、自分の苦手なものがなくなっていくということです。この北島先生の言葉も、素晴らしいものだと思います。これも、結局、アウトプット(出力)していることで、自分が成長出来るということです。
Ⅳ.4番目は「成功する人!」になるための、有料セミナーに参加したあと必須なアウトプットの話です。
貴重なお金と時間を投資して、セミナー・研修に参加したり、書店でビジネス書を買った場合、講師が良くても悪くても、その内容の一部でも吸収して、投資以上のリターンを得る事が、自分の成果を出すための条件になります。では、自分の成果を出す「成功する人」はなにが違うのか?
それは、セミナー後の行動です。成功する人は、セミナーを聞くだけで終わらず、実際に手を動かしたり、人に語ったりして「アウトプット」をして、学んだものを、自分のものとして消化しているのです。 人間は、ただ聞いて、脳内で考えるだけでは、きちんと物事を定着させることができないのです。昔の学生の頃の授業やテスト勉強を思い出して欲しいのですが、下記の制限がかけられた場合に、あなたはテストで良い点が取れるでしょうか?
・ノートに書き留めるなど、一切の筆記用具を使うことは禁止。
・口頭で教科書を音読するのも禁止。
・全て、眼と耳で見聞きした内容を、頭の中で覚えることしか許さない。
これだけ制限されて、それでもテストで高得点を取るというのは、一万人に一人の天才を除いて、殆どの人には無理だというのは分かりますよね。そして、学生の頃は、テストで良い点を取るために、ノートをきちんとまとめたり、鉛筆で数学の問題を説いたり、英語の単語帳を音読していっぱい覚えたりしていましたよね。つまり、セミナーなどに参加した後に、書くなり、話すなりして、なんらかの形でアウトプット(出力)をして、しっかりと脳に内容を焼き付けなければいけない。
そのまま、忘却して終わりであれば、そのセミナーに投資したお金と時間は、無駄になってしまうのです。
ここで少し、経営の話をします。
法人を設立すれば、その日から誰でも社長です。しかし、ビジネスとは、より優れたものが勝ち残るプロフェッショナルの世界。つまり、アマチュア社長でなく、プロ社長であり続けなければなりません。今では、経営者の実力を鍛えるために、商工会議所や経済団体などが主催で、さまざまな勉強をする場があります。しかし、多くの中小企業の社長が、その場で聞いて、「なるほど。なるほど。」と、その場で感心して、終わり。というパターンが殆どです。プロ経営者とは、事業を大きくする正しい原理・原則を学び、それを素直に実践し、きちんと成果を上げる人です。
そして、実践に至るためには、学んだことを、しっかりと脳内で消化し、自分のものにすること。
そのためには、学んだことを、アウトプットすることが、必須なのです。セミナーに出たり、ビジネス書を買ったりして、向上心を持って学ぶことは、尊いことです。しかし、経営者として、プロとアマを分けるのは、そのあとの行動にあることを捉えて、ぜひ、実践をして頂きたいです。
さて、今回の最後の言葉です。
当院にアトピーetcで受診されている方にお願いです。
当院で自分の病気の説明や治療法を聞いて納得されたら、まずは教わった治療法を実行して下さい。
医師の話を聞いて納得してしまって、そのあとの行動がゼロでは、全く受診した意味がありません。あなたの健康のため、かつ、あなたが人生の目的を達成して、あなたに関わる人達が幸せである為にも、教えてもらった内容を積極的にアウトプットすることを始めてください。
数ヶ月に1回受診して、毎回同じ質問を繰り返しているようでは、進歩はありません。
医師は患者さんに病態生理や治療法について教えることは出来ますが、それをアウトプットするのはあなた方自身なのです。
いま流行の東進ハイスクール林修先生(リンク有り)の言葉を真似れば、アウトプットするのは、「今でしょ!」(リンク有り)ということです。
谷口雄一
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